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仙台高等裁判所 昭和48年(ツ)37号 判決

上告人

今野ミキ子

外二名

右三名訴訟代理人

甲野一郎(仮名)

被上告人

伊藤一男

主文

本件各上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人甲野一郎の上告理由について。

本件記録によると、本件訴は昭和四六年二月一九日提起されて以来、第一審において五回(そのうち休止が一回)、原審において一〇回(途中で一旦弁論が終結され、控訴代理人の申立により弁論が再開されている。)の右口頭弁論期日が開かれ、原審は昭和四八年七月一六日弁論を終結し、同年七月三〇日控訴棄却の判決を言い渡したものであるところ、その弁論の経過をみると、その間原告(控訴)代理人(本件上告代理人弁護士甲野一郎)が出頭して実質的に弁論が行われたのは、一審二回、原審二回(他に和解勧告の行われたのが一回)だけであつて、他は右代理人から、代理人病気のため、事実調査のため、本人病気のため、本人に出頭しがたい事由が生じたためなどの理由で期日の変更申請が反覆され(相手方代理人はおおむね各期日に出頭している。)、また上告代理人が唯一の証拠方法と主張する上告人今野俊介もしくは同今野ミキ子の各本人尋問期日四回も、そのうち二回は各本人が病気を理由として出頭せず、そのうち二回は各本人が正当な理由なく出頭しなかつたため右証拠調ができなかつたことが各認められる。

右の経過によれば、上告人らおよびその代理人の態度は、訴訟の著しい遅延や訴訟関係人のこうむる迷惑や損害を全く顧みず、訴訟進行の熱意と責任とに著しく欠けるものであつて、自ら訴を提起し、追行する者として、迅速裁判の要請と訴訟における信義誠実の原則に反するものといわなければならない。そしてたとえ唯一の証拠方法であつても、右のような事情を考慮し、右本人二名の証拠調の決定を取り消して弁論を終結した原審の措置は、まことに相当であり、民訴法二六〇条の法意に照らして容易に是認しうるところである。原判決には所論のような違法はない。

よつて、本件各上告は理由がないから棄却すべきものとし、民訴法四〇一条、九五条、八九条を各適用して主文のとおり判決する。

(佐藤幸太郎 田坂友男 佐々木泉)

上告理由〈省略〉

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